第4回展からの参加で、今回が最後の出品となります。過去7回の美術館という広い会場での自由な発表は、従来の日本画のイメージから懸け離れた作品を生み出すこととなりました。とはいえ それらの作品群は日本の伝統美術を現代のボキャブラリーに読み替えていく作業だったといえます。
私の作品は、古典作品の仏画や やまと絵をサンプルとしてシルクスクリーンの版にし、複製することにより作品を構成してゆく方法をとっています。その際シルクスクリーンプリントを何度もくり返し、インクの層を積み重ねて、イメージ自体をレリーフ状に盛り上げ、作品に三次元的な物質性をもたせるのです。
そうすることによって、サンプルとなった古典絵画が、私達の住む空間とは別の平面上の非物質的イメージから、私達と空間を共有するオブジェへと変身を遂げ、イメージの分割、再構成を容易にしたのです。また、従来の絵画のように壁と平行関係にある平面という絵画の在り方を変え、彫刻のようにふるまう絵画となりました。
これは、屏風絵や蒔絵のような立体的な支持体を持つ伝統絵画の特性に立ち返ったと言えるのかも知れません。